タイのクーデター;とりあえずの総括

19日夜に発生したタイのクーデターはその後、あっけなく終了しました。(まだ戒厳令がでているので、厳密の意味では「終了していませんが、タイ人のメンタリティとしては完全に過去のものです」

まだ数日しかたっていないのですが、街も完全に落ち着いて、私も周りも、仕事も、全く何もなかったかのように動いています。

クーデターが起きてから、身の回りのこと、考えたことをを四方山的に書いてみます。

クーデターは、20日早朝に国王の内諾を得た時点で「勝負あった」との感じを受けていましたが、その後(状況的に判断すると)周到な用意が行われており、「最初から勝負あった」状態だったようです。

クーデター発生後、日時をおかず「政府高官がテレビ出演」「政府高官級全体会議が実施」「当面は次官が大臣権限を持つとの通知」などからすると、(すべてではないものの)官僚との連携プレーが見られます。タクシンは公務員は信用せずに民間活力導入を徹底的にすすめてきました。また、公務員改革で飴と鞭の公務員登用制度の導入や地方分権化政策で中央公務員を減らし地方に振り分けなどを行なってきました。そのため、多くの官僚・公務員にとってタクシンは憎き敵です。

「タクシン政権により大プロジェクトからはずされてきたグループ」「公務員・準公務員改革で冷や飯を食ってきた公務員」「社会浄化策(酒・麻薬・エンターティメント施設取り締まり等)で冷や飯を食ってきたグループ」などなどが、タクシンの倫理的問題点を争点に戦ってきた総決算が今回のクーデターといえます。

反タクシングループがしてきた下記のような批判;

民主的な首相交代を求める    → 選挙をすればタクシンが勝ってしまうので、「選挙以外の方法が民主的」であるとの主張
タクシン首相が辞任宣言をしたのに居座るとの批判 → タクシンは「辞任する」とは言っていない。「次の首相に立候補しない」とは言ったが。(但し、選挙で勝った場合については明言せず)
選挙をタクシンが引き延ばし首相に居座ったとの批判 → 客観的に見れば選挙を引き延ばしたのは反タクシン側(早急な選挙ではタクシンが勝ってしまうため)
株取引で巨額の利益を得たとの批判 → 判明している中では正当な商行為
通信企業株を外国企業に売り渡した(タイの財産を外国に売り渡した)との批判 → 判明している中では正当な商行為
株取引に関して脱税を図ったとの批判 → 判明している中ではタイの税法に従って無税となっている

などなどのタクシン批判は、「論理的には」すべて説得性に欠けるものです。そのため、「タクシンは倫理的におかしい」「首相としての品位がない」などと漠然としたタクシン批判にならざるを得ませんでした。普通に考えればそれらを判断する手段が選挙なのですが、「選挙になるとタクシンが勝つ」ので反タクシン勢力が決定打に欠ける状況が続いており、逆にそれがタクシンを強気にさせた原因でしょう。

一方でタクシンへの支持率は徐々に下がり、反タクシン運動は一定の成果がでていました。その中で起きたのが今回のクーデターです。

まあ、日本であれば、「内閣不信任案動議・可決」程度のものかも知れません。


現に、タイでは「タクシン政権で決定したプロジェクトも含め、すべて予定通り」、「クーデター前と後ろと何も代わることをない」との宣伝をしきりにしています。


22日に行われた障害者支援セミナーでの政府高官(事務次官補)のスピーチでは、「タイでは障害者の権利は1997年に制定された憲法で保証されている」との意味の部分がありました。

えっ、いま、憲法は破棄されたんじゃないの? と思わず突っ込んでしまいそうです。
スピーチはクーデター前に作成されたにしろ、それをあえて使うとは、、、、これも論理より現実を重視するタイらしいと思いました。

経済的にも「クーデター後のバーツの下落が最大3%(その後かなり持ち直してきている)」、「株式市場の下落もわずか」であれば経済的に影響が少ないともいえるかもしれません。むしろ、「クーデターにより(今までの反タクシン運動の混乱が解決し)経済的にはプラス」との見方もあるようです。(私の周りのタイ人は、殆どがそのような見方です;楽観すぎる?)


そういえば、タクシン政権での中枢を担っていた人も「おとがめなし」との情報も伝わってきますし、タクシン政権のシンクタンク的役割を果たして居た人達が革命審議委員会のメンバーに選出されているのを見ると、「政策に変更なし」を対外的にアピールするのと同時に「奥の深い国だなタイは」と改めて感じてしまいます。


ちなみに、クーデターの際に出動した戦車はせいぜい10数台のようです。とても武力で制圧する台数ではなく、出動前には話がついていたのでしょう。

いま、戦車の前にはタイ人観光客が大勢詰めかけて写真をとっています。

ちなみに、熱烈なタクシン支持者だったはずの知り合いのタイ人は、「タクシンの政策はよかったが、彼個人の倫理観に問題があった」と言いました。変わり身の早さはさすがです。

「これが、タイ式民主主義なんだ」と言ったタイ人がいました。
かって一度も植民地にならなかったタイ。
第2次世界大戦では日本の同盟国だったはずなのに、なぜか戦勝国側になったタイ。
タイのしたたかさを改めて知った今回のクーデターでした。

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